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こたろう博物学研究所
探訪記録:20000501

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堂ヶ森(丹原町/面河村)・二ノ森(小松町/面河村)登山【平成12年(2000)5月1日】


 今日も五月晴れ。天気は最高である。2日前に石墨山に登ったばかりだというのに、このまま休みをぼんやりと過ごすのは勿体無い。
 石墨山から見た堂ヶ森の姿が瞼から消えない状態のままである。身体がうずうずしてならない。気がつけばたまりかねて2日前と同じ道、そう黒森峠越えで一路面河村の梅ヶ市を目指している。
 
 唐岬の滝入口を越えたところで、道路崩落の修復工事で足止めを食らう。突如、前を走っていた2台の車から男性4人が降りて行って、道路工事の仕事をしている人達に大声で絡み始める。
「お前等、何考えとるんぞぉ!!」
かなりの剣幕である。

「おいおい、暴力沙汰は勘弁してよ....しかし何となく居心地悪いなぁ....」と車の中でじっとしていると、名古屋から来たという若者のバイクが横に停まって話し掛けてくる。
「通れるんですかね....」
「さぁ、どうだろうか....。しかし、この道を通れないことには困るんだけどねぇ」
「あのぅ、面河渓へ行くにはこの道しかないんですかね」
「あぁ、面河渓へ行くの?.....引き返して国道33号線に出るしか無いと思うけど.、せっかくここまで来たのに引き返すのは勿体無いよ」
などと話していると、ヤバそうなオジさん達と道路工事の作業員との間で話がついたようで、車が動き出した。

 通行することができて、ヤバそうなオジさん達には感謝しなければならないのだが、そのオジさん達はその現場を通り過ぎたところの路傍に車を再度停めて、再び絡みに行こうとしている。道路工事の皆さんには気の毒な限りだが、こちらも登山を開始するまでにこれ以上足止めをくらうわけにはいかない。

 途中、面河ダムの辺で車を停め、梅ヶ市の場所を確認する。国道494号線を進み、次の分岐で県道153号線へと左に分かれていく。5分ほど車を走らせると、「登山者以外駐車御断り」と看板が立てられた駐車場に到着。そこに車を停めて登山準備に移る。僕以外には登山者はいない模様。何となく寂しさを覚えながらも、まぁ山頂まで登れば保井野からの登山者に出会うだろうと、早速登山に移る。時刻は10:00。

 登山口には「堂ヶ森まで4,250m」という標識がある。いざ歩き始めたものの急坂続きで結構しんどい。30分ほど歩くが、周りの景色も全く見えない。行けども行けども周りは林である。登山道は見失うことはないほど綺麗に刈り込まれているのだけが救いである。息をきらしながら進んでいくと、やがて背後に石墨山がその雄姿を見せる。その頃からなだらかな尾根道へと変わるが、喜びも束の間。またもやきつい坂道へと変わる。

 登り始めて1時間半ぐらいすると、ブナ、ナラの自然林に包まれる。最近は、景色が見えなくともこのような林に出くわすとほっとした気分になる。腰を下ろして休んでいると、北側から押し寄せた霧が辺り一面を覆う。神秘的な雰囲気を楽しむのも良いのだが、「おいおい、道も知らないのに、ガスに包まれるなんて勘弁してよ」といった感じだ。疲れも十分に癒えぬまま、5分ほど休んだだけで再び歩き始める。

 それからすぐに笹原へと辿り着いた。先程まで出ていた霧はすっかり晴れ、やがて面河ダム湖や石墨山の姿が臨めてくる。景色上々。気分上々だ。目の前に、堂ヶ森も見えてきた。
 しかし、笹原の中は歩けどもなかなか目的地に着かない。坂瀬分岐保井野分岐を越えてただひたすら歩いて行く。ほんの少しの距離に見えたのだが、結局30分かかって堂ヶ森の尾根に到着。一面笹で覆われた山というのもなかなか良いものだ。この笹原は延々と東へ向けて広がっている。木はシコクシラベの白骨以外には一本も立っていない。
 一息ついてマイクロウェーブ反射版2基の建つ山頂へと向かう。標高1689mの三角点は山頂の一番北端に有る。紅白の旗が紅白のポールに取り付けられ、山頂を吹き抜ける風にはためいている。北壁は断崖といった感じで、高所恐怖症の僕は思わず身震いしてしまう。足元の土壌は危なかしく、今にも崩れ落ちそうな柔らかさであるのも恐怖心を駆り立てる。
 反射板の下に荷物を降ろし、昼食を摂る。4月だというのに、山頂を抜ける風は肌を切るように冷たい。何時もの如くインスタントラーメンを茹でる。その間に握り飯を食らいながらビールを飲む。流石に2時間歩き続けると汗となって身体の水分は抜けきっている。喉から流れ込むビールが身体に染み渡り心地よい。
 ところが10分も経つと、汗も乾き、急に風の寒さが染みてくる。そして、じっとしているのがたまらなくなってくる。暖かいラーメンをすすっているとその寒さは幾分か紛れるものの、食べ終わると寒くてならなくなる。
 さて、今からどうしようか。時計の針は13:00。下山には少し早い時間だ。ここまで来たついでに二ノ森へ出向いてみようかと何時ものごとく色気が出てくる。堂ヶ森山頂での1時間近くの昼食・休憩で足腰の痛み・疲れもだいぶん癒えたので、いざ二ノ森へと出発の準備に移る。

 それにしても、誰一人として登山者が居ない。展望にも優れ、道もしっかりしているし、おまけにゴールデンウィーク中だというのにどうしたものか。やはりアプローチが少し長目だから敬遠するのだろうか。ツツジなどの花を求めて、別の山を目指す人が多いのだろうか。
 一人寂しく笹尾根を下って行く。しばらく下ると道沿いに荒れ果てた小屋がある。屋根などは抜け落ちて、とても利用できる状態ではない。小屋の前には不動明王だろうか、石仏がしっかりと留守を守るかの如くじっと佇んでいる。

 先程「もううんざりだ」と思っていた笹原闊歩。上を見上げるとまだまだずっと先まで続いている。何度も引き返そうかどうしようかとジレンマに陥りながらも、息を切らしながら進んでいく。唯一の救いは、笹道の脇につつましく咲くショウジョウバカマの花。群生とまでは行かないが、初めて目にする愛らしい花。気分が幾分か紛れる思いだ。歩き続けること40分。五代の別れに辿り着いた。南東方向には土小屋・岩黒山・筒上山・手箱山が鮮明に見える。そして南方向へは五代ヶ森へと続く笹尾根が。こんな景色を見ると、疲れが吹っ飛んでしまう。
 気を取り直して歩き始める。地図もろくすっぽ確認せずに、左側に聳える笹に覆われた山が二ノ森と思い込んで、あともう少し、あともう少しと頑張って登る。14:00、山頂に到着。やった二ノ森だ...と思いきや、三角点には何の標識も立っていない。「おや?四国で三番目、愛媛で二番目の高峰だというのに粗末な扱いじゃのう」と不審に思い、地図を広げてみると、もう一つ東側の山ではないか...。そう、今自分が立っているのは五代の別れピークではないか...。今度こそ、「二ノ森まで足を伸ばすかどうか」で悩んでしまう。14:00という時刻。折り返しを考えると、余り余裕があるとも言えない。ここが二ノ森だと信じて、パワーも半ば使い果たして歩いてきた。だけどここで引き返したら絶対に後で後悔する。

 結局、ここまで来たからには山頂を目指すしかないと重たい足をひきずりながら歩いて行く。スローペースではあったものの、20分ぐらいで二ノ森に辿りつくことができた。14:20、二ノ森山頂、標高1929mの三角点に立つ。まさしく、ここはパノラマの世界である。四方八方遮るものは何一つない。土小屋岩黒山などもより鮮明に確認することができる。ただ、厚く垂れ込めた霧というか雲というか、それだけが東側の風景を遮る。北側で湧き上がった雲は風に流されて、尾根を駆け抜け、ジェット気流のような勢いで面河の谷めがけて傾れ落ちていく。ほんの2〜3km先に石鎚山が聳えているというのに、全くと言っていいほど姿を見ることができない。折角ここまで来たのに何ということだ。意地でも写真に収めてやると意気込んで、コーヒーを沸かしながら晴れ渡る瞬間を待つ。しかし、天気は崩れる一方。身の周りさえも霧に包まれてしまう。
 30分ほど待ってはみたものの、石鎚の姿が拝めたのはほんの10秒か20秒だ。悔しいけれどここらへんで引き下がらないと、明るいうちに下山できなくてもまずい。残念ではあるが、14:50、下山に移る。

 下りはちゃんとトラバース道を通り、15:05、五代の別れに到着。休む間もなく堂ヶ森を目指して下っていく。15:38、堂ヶ森着。先程とはうってかわって一面が白い霧に包まれている。だが、いっぺん通った道なので全く不安感はない。出来ればもう一度、面河ダム石墨山などの遠景を楽しみたかったが、どうこう言っても仕方がない。5〜6分休んでから、下山を続ける。坂瀬分岐からは要所要所に赤テープを巻きながらゆっくりと坂道を降りて行く。それでも16:55に登山口に着いた。二ノ森から丁度2時間である。

 今日はとにかく歩いた。こんなに歩いたのは1999年10月2日の赤星山登山以来である。しかし、おかげで大抵の山ならば行ける自信もついた。



【同行者】なし
【コースタイム】
[往路]梅ヶ市→(1時間半)→自然林→(10分)→笹原→(5分)→坂瀬分岐→(5分)→保井野分岐→(30分)→堂ヶ森→(40分)→五代の別れ→(20分)→五代の別れピーク→(15分)→二ノ森
[復路]
二ノ森→(15分)→五代の別れ→(35分)→堂ヶ森→(15分)→坂瀬分岐→(55分)→梅ヶ市
 

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